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2010年4月13日 (火)

誰もが口ずさめる歌が消えた。

私は1961年生まれで丑年の牡牛座、O型で三碧木星の男性だ。さすがに東京オリンピックは、ほとんど記憶には無いが、大阪万博の頃は小学生だった。初めて乗ったモノレールに感激し、太陽の塔を首が痛くなるまで見上げ、月の石には狂喜乱舞した。家にテレビがやって来たのも覚えているし、カラー放送が始まった時には、ちょうど今のアナログ表記のように画面右上にカラーと表示されていたのも知っている。
家族揃って紅白も観たし、ゆく年来る年が始まると、互いに向き合い新年の挨拶もした。マヨネーズというものを知った時には、この世にこんな美味いものがあるのかと感激したし、生クリームのケーキを食べた時には、それまでのバタークリームが前世紀の遺物のようにも思えた。今思えば、何もかもが新しく、毎日が驚きの連続だったような気がする。
カラオケで、そのころの歌が流れれば懐かしく、ほとんどのヒット曲が歌える。美空ひばりや三波春夫、桜田淳子や西城秀樹、ジュリーに天地真理はもちろんのこと、たとえそれが子供には縁の無い演歌だろうが、ムード歌謡だろうが、グループサウンズだろうが、五木ひろしも、ちあきなおみも、青江三奈も、ピンキーとキラーズもクールファイブでも、橋幸夫も舟木一夫も裕次郎も都はるみもザ・ピーナッツもピンカラ兄弟も殿様キングスだって一曲や二曲は歌える自信がある。
もちろん今のようにカラオケがあった訳じゃなく、そもそも小学生がそんなところに行く時代でも無いし、かといって、うちが、家でみんなそろって歌うような歌謡家族であったはずもない。では、なぜ歌えちゃうんだろうか?すべてが国民的に流行った歌という訳でもないと思う。たしかに「世界の国からこんにちは」や、「黒猫のタンゴ」「りんごの歌」に「高校三年生」「上を向いて歩こう」のように時代を超えて歌い継がれるようなヒット曲もあったが、子供から大人までみんなの記憶に残るような代表曲ばかりではなかった筈だ。
その答えはテレビの存在だろう。今だってテレビはある。それどころか一人に一台は当たり前という爆発的な普及をみせている。そう、まさに答えはそこにある。私の少年時代、家族団欒の中心にはテレビがあった。高価なテレビは家族が集まる居間に大切に置かれ、親も子も拳を振り上げジャイアント馬場を応援し、9回裏ツーアウト満塁の巨人阪神戦では手に汗を握った。浅間山荘事件では、食事も忘れて見入っていたし、アポロ11号が月面に着陸したときは家族みんなで未来を夢見た。吉本新喜劇(出身が関西なので)で腹を抱えて笑い、あげくにはテレビにツッコミを入れたり、歌謡番組では父親が鼻歌を口ずさんでいた。そう、今と違ってテレビは、たった一台しかなかったのだ。しかも当時家で最大の権力者は父親だったし、母の存在も子供にとっては相当なものだった。当然、チャンネル権は父親にあった。今のように子供が神様、お客様のような扱いをされる時代ではなかったので、好きなアニメを見せてもらうためには、良い子でいて、母に根回しをし、間違いなく宿題は終わらせてから、父に懇願するしかなかった。それ以外は必然的に、父や母が選んだ番組を一緒に観ることになる。とはいえ、番組が始まってしまえば、テレビが最大の娯楽だった時代である、食い入るように見入ったのは言うまでもない。そう、ここで私の記憶の中に昭和歌謡が刷り込まれたのだ。自分で選んで聴いた訳ではないし、興味があった歌ではなかったかもしれないが、その記憶が今も鮮明に残っているという仕掛けだ。だから、カラオケで誰かが歌おうものなら、その記憶の扉が解き放たれ、フルコーラス歌えてしまうのだ。

テレビが一人一台になった現代、チャンネル争いをすることもなく自分の部屋で見たい番組が見放題という贅沢で幸せな時代になった。その代わり、居間で家族が集まり、わいわいがやがや楽しい家族団らんも無くなってしまった。子供は親を煙たがり、親は子供の考えていることがわからなくなった。便利で自由な暮らしによって、大切な繋がりが希薄になってしまった気がする。

そうして、家族みんなが歌える歌も消えてしまった。

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