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2010年2月22日 (月)

天才の眼。

「私は絵が下手だから。」
「絵は苦手、上手にかける人がうらやましい。」

私が絵を書いているせいか、私の周りではそういう話題が出る事は多い。では、絵を書くということは、いったいどういうことなんだろうか?ラスコーの洞窟に書かれた壁画が物語るように、人間は、言葉の発明以前から絵を書いていた。つまり、絵を書くという行為は言語より簡単なことだったのではないか?そう言ってしまうと少々乱暴かもしれないが、満足に言葉を話せない子供も絵は書くので、当たらずしも遠からずだろう。その動機は、自分の記憶を助けるために書いたり、自身の欲求を満たすためだったり、己を探求するためだったりするわけだが、まず最初の目的は他の人に何かを伝えるということだろう。
人に伝えるためには、ある程度忠実に書かれている必要がある。犬を書いたのに牛に見えてしまっては伝えた事にならなくなってしまうし、誤解を生むだろう。では、犬と牛はどうちがうのか?犬とキリンならわかりやすいが牛になると少し高度だ。(牛の品種は白黒のホルスタインじゃないことにして。)
まず、大きさが違う。体格が違う。.....ここまではあまり間違う事は無いだろう。ただ、これを一枚の絵でちゃんと書き分けるのは少々難しい。並べて比較させれば良いかもしれないが、大きさを変えるだけでは親子に見えるだけかもしれない。
もう少し、よく見てみよう。鼻の形が違う。鼻の色が違う。目の付いている場所が違う。耳のつき方が違う。鼻、口と額の関係が違う。牛には角がある。この辺が見えてくると、犬と牛をかき分けられるだろう。これらの事は、二つをじっくり見比べればわかることだが、必ずしも牛と犬が一緒にいるとは限らない。目の前の牛だけを見て頭の中の犬と比較するためには、犬をよく見て記憶しておく必要がある。

そう、絵をかくということの本質は、対象物を「見る」ということに尽きる。鉛筆や筆などの道具を上手に使えるかどうかと勘違いされがちだが、それは熟練であり経験なので、多少の差はあるものの、あきらめずに訓練すれば誰もが必ず上手に使えるようになる。たとえどんなに道具が上手に使えてもうまい絵が書けるとは限らない。すべての絵が写実的とは限らないので、そんなに見る事が大事なのかといわれそうだが、ちゃんと見れているからこそデフォルメも出来るし、崩す事もできる。絵が苦手だという人ほど、ろくに見ないですぐ書き始めてしまう。見えてないのだからうまくかけないのはあたりまえだ。絵の基礎として、デッサンがあるが、これこそ書く事を学ぶのではなく見る事を学ぶための反復練習にほかならない。石膏像など白いものをデッサンするのは、色や模様に惑わされず形を捉えられるようにするためだ。最近のアーティストさんはよく知らないが、昔から芸術家と言われる大作家ほど、日々のこのデッサンを怠らない。素晴らしい作品を描けるようになってからもこの基礎訓練はかかさないのだから、絵がうまいのはあたりまえという事になる。

そこまですごい絵を書きたいともかけるとも思っていないが、少しは上手になりたいと思っているなら、書きたいものを前にして、まず、ペンは持たずに、しばらく眺めてみよう。それこそ穴の開くほど見つめてみよう。ただ見えているという状態ではなく、色々頭で考えながら見てみよう。目をつぶって、そこに今まで見ていたものを思い描いてみよう。わからないところがあるなら、目を開けてまた見てみよう。そうして、頭の中にしっかり再構築できるようになったら、初めてペンをとって書いてみよう。線は稚拙かもしれないが、今までよりずっと上手になっているはずだ。

「見えている事」と「見る事」は大きく違う。たとえば、カメラで言えば、「見えてる」状態はファインダーを覗いている状態、「見る」は、シャッターを切り、焼き付ける事に近いかもしれない。見る事が確実にできるなら、わざわざデッサンをする必要はないと思う。漢字の書き取りと同じように、ただ、見るだけでは覚えられないから何度も何度も書いて覚える。天才画家と言われる人は、この「見る目」が、それこそ天才的にすぐれているんだろうと思う。我々にはそこまでの「目」は備わっていないので、頑張ってデッサンをするしかない。

しかし、天才と言われる人ほどひたすらデッサンしたりするんだよなぁ。

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コメント

私もね、そう思っていたんです。学生にもそういった話しをしたりして。でも、全く違う事に最近気がつきました。
良く物を見て観察するという事自体は同意見なのですが、デザイナーは外観を見て記憶に留めますが、絵描きは中身を味わうんです。

投稿: Artist HAL_ | 2010年2月23日 (火) 04時59分

そうですね。たぶんそれは見留めた瞬間と見た先にあるもののようなきがします。だからこそ絵描きの表現はこんなにも広がりを持ち、見る人に感動を与えられるのだと思います。

投稿: oka | 2010年2月23日 (火) 11時27分

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