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2009年9月 5日 (土)

ある江戸風鈴職人の言葉。

「親方が苦しい家計なら、跡継ぎはできない。」

先日、テレビで、ある江戸風鈴職人の親方が言っていた言葉。この方は、弟子達に風鈴作りの技術だけではなく、百貨店などへの営業に同行させたり、お客さんとの応対を教えたりと、弟子が独り立ちして食べていけるように様々な事を教育されているということでした。また、ご自身は、風鈴の売れない冬場には単身アメリカに渡り、クリスマス飾りとして風鈴を販売したり、実演を見せたりとても精力的に活動されているということでした。

伝統と名のつくものは、どこも後継者がなかなか見つからないという苦悩を抱えているのは周知の事実です。なぜ、跡継ぎができないのか?あたりまえのことですが、「食えない。」からです。たとえ細々と暮らしていけたとしても、だれが望んで苦労を背負い込むでしょうか?生活に苦労する親方を見て、だれが後を継ごうと思うでしょうか?当事者じゃない周りの人々は、「ぜひ、残すべきだ。」「世界にも誇れる日本の伝統だ。」「これは日本の財産だ、あなた方は未来に伝えていく義務がある。」.....。ってな感じで、続ける事を暗に強制する。そのくせ、何をやるかといえば、せいぜい補助金を出そうとかいうお話になる程度です。

農業や漁業もそうだけど、この補助金というものがくせ者な気がする。たしかに、今現在、生活に窮している人には、ありがたい話だ。しかし、根本的に問題が解決するわけじゃない。さらにはこの補助金で後継者を育成しようという話にもなってくる。後継者を育てる事は立派な事だ。でも、親方が自分の生活でいっぱいいっぱいなのに、たくさんの後継者を育ててしまったら、市場を食い合い、ただでさえ苦しい生活が成り立たなくなってしまう。もうひとつ、補助金を出す側の人々が、この商品を買うのだろうか?どんなに素晴らしい匠の技でも、「素晴らしいわね。これこそ日本の美よ。でも、ちょっと家には合わないかしら。」「うちは洋風だから.....、マンションだから.....。」「こんなに素晴らしいものなんだもの、きっとみなさん欲しがるわよ。私じゃないけど.....。」なんて声が聞こえてきそうだ。また、補助金をもらって生活はできるようになっても、自分たちの作ったものが売れないのなら、本当の意味で人に喜んでもらえないのなら作っていても楽しくは無いでしょう?そんなものは時代を超えて長くは残っていかない。せいぜい二代か三代で滅びるでしょう。ちょうど今がその時じゃないかな?

伝統は、伝えられたものを模倣し残していくことじゃない。伝えられたものを活かし、その時代に生かすことが大事だ。だからこそ人々はそのものに価値を見いだし、お金を出す。結果、それは、ちゃんと時代を超えて残っていく。この「残っていく」ということが大事だ。「残していく」ではなく残っていかなければならない。たった一文字違いだが大きな違いだ。「残していく」というのは意思とか使命感とかで、時間が経つと薄れていったり、他に興味が移ったりしてしまう危ういもので保護に近い。「残っていく」のは自然な事、みんなが形式的でなく、それを必要とし、生活の一部として伝わっていく。その結果だ。

作り手は、その時代に合わせてモノづくりをしてほしい。頑固に「どうせ、今の人にはわからない」とか「伝統的にこれはこういうものなんだから」とか「生活がわかったから、時代が変わったからしょうがない」とか言わず、変化を受け入れよう。伝えられてきたものも時代によってその形を変えてきたように。我々受け手は、変わった事に目を向けよう。それでもだめなら、ちゃんと、これじゃあ欲しくないと言おう。欲しくも無いのに「素晴らしいですね、きっと売れますよ。」とか無責任なことは言わずに。

作る側と使う側の思いが一緒になって、初めて伝統になるんじゃないかと思う。

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