« 裏通りで天使を発見。 | トップページ | 右と左は別の人。 »

2009年7月 5日 (日)

離れて見よう!

Koomote

日本の美術館では、その狭さと人の多さのせいで、作品から1メートル、ひどい時は数十センチの距離で見ることを余儀なくされます。みんな一緒に離れればいいのですが、ちょっと距離を空けるや否や次々と前に人が入ってきてしまいます。そうして、作品に顔を近づけ「すごいなぁ」「細かいなぁ」「筆のタッチが.....。」と重箱の隅をつつくような見方をします。画家に限らず作家は制作過程でも作品を離れて見てみます。そうして気になるところを調整していくわけです。つまり、作品は離れて見るもの、近くで見ていては全体が見えないんです。もちろん、作家は腕の届く範囲で制作するわけですから、その距離で最善の表現をすることもあります。しかし、離れて見てその細部の表現が必要でなかったり、場合によっては神経質でかえって全体像を壊しそうな場合は、あえてその部分を削ります。そうして作られるものを至近距離で見るのはナンセンスです。それは作家の捨てた部分を見ていることになるのですから。

もちろん、芸術の鑑賞方法は、人それぞれ自由ですから、どう見なきゃいけないという規則はありません。近くで見ることがまったくダメというわけでもありません。そこには作家の苦悩や試行錯誤が見て取れるわけですから、そういう意味では見ても面白いと思います。(個人的にはちょっと見られたくない部分を見られているようで恥ずかしいですが.....。)とはいえ、それだけでは作品の本質を見ることはできません。本当の意味で作品に触れ合うことも、作家の思いを受け取ることもできないのではないかと思います。

今年の春、日本橋の三井記念美術館に三井家所蔵の能面展を見に行きました。花の小面を筆頭に、貴重な能面の数々が惜しげも無く展示されていて素晴らしい展示会でした。しかし、ここでもほとんどの人が、ガラスケースに顔をくっつきそうなくらい近づけて見ていました。能面は舞台で使用するもの、離れて見てこそその真価がわかります。(本当は能楽師が付けて舞ってこそなのですが、それは叶わぬ夢ということで...。)特に能面は、その道具としての性質上、演出のため意図的に左右が違う作りになっています。最低でも3mくらい許されれば5mくらい離れて、右から左から見比べてみると、近くで見るのとは全然違った表情を見せてくれます。(写真は「花の小面」ではなく、私の作った小面です。お間違え無きよう。花の小面はもっとかわいいです。)

しかし、日本の美術館は、離れて見ることをなかなか許してくれません。特に企画展は狭いスペースにこれでもかってくらいの作品数を展示し、これでもかっていうくらい人が行列して観賞します。これでは離れて見るどころか、じっくり見ることもできません。そういうときは人気のない常設展に行きましょう。そこならいくらでも離れて見ることができます。常設展にも少なからずいい作品はあります。日本の美術館は、もう少し常設展に力を注いで欲しいとも思います。世界最大の美術館(博物館?)であるルーブルは、そのほとんどが常設展です。いつ行っても見たい絵がある。そんな美術館をもっと増やして欲しい。そうすれば、もう少しましな環境で芸術と触れ合うことができるのではないでしょうか?

さあ、離れて見ましょう。作家と同じ目線で作家と対話をしましょう。きっと今まで見えなかったものが見えてきます。

|

« 裏通りで天使を発見。 | トップページ | 右と左は別の人。 »

コラム・独り言」カテゴリの記事

芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1216618/30176657

この記事へのトラックバック一覧です: 離れて見よう!:

« 裏通りで天使を発見。 | トップページ | 右と左は別の人。 »